- 美容室開業における不動産選定の重要性
- 不動産選定をする前に決めておくこと
- 不動産選定の重要ポイント
- 判断基準を明確にして、物件を点数化する
ー美容室経営成功の鍵を握るのは、不動産選定です。
成功するかどうかは7割方ここで決まるとも言われています。
この美容室独立開業連載も第12回を迎えましたが、ここから数回に渡って、不動産選びについて解説いたします。
あなたは、
- そもそも物件を借りるまでって何をすればいいの?
- とりあえず家賃が安いところでいいかな?
- 不動産選びのポイントは?
なんて疑問を持ったことはありませんか?
今回はそんな悩みを解決していきたいと思います。
(※ なお、この記事は小規模サロンの開業を考える人にとっても参考になる内容ですが、主には「サロンを大きく成長・拡大させていきたい」考える方へと向けて執筆しております。 あらかじめご了承ください。)
1. 美容室開業における不動産選定の重要性
美容室の成功の70%は不動産選定の時点で決まります。 はたまた、人によっては90%がこの時点で決まってしまうという人もいます。
なぜこれほどまでに不動産選定が大切かと言いますと、
- 初期費用も毎月の固定費も非常に高額
- 一度選んだらそう簡単には変更ができない
と言った理由があるからです。
サロン物件の賃料は非常に高額です。 都内の駅近でそれなりの規模の店舗を構えようと思えば、月額30万円でも安いくらいです。もし銀座の一等地でサロンを構えようと思ったら、平気で100万円以上が固定費としてかかってきます。
このように高額な月額料金がかかる上、初期費用もかなりかかります。敷金、礼金、前家賃、保証金など、合わせると 家賃半年〜7ヶ月分くらいはかかってくるでしょう。もし家賃30万円の物件ならば約200万円程度です。
さらには、居抜き物件をそのまま使うのでなければ 工事費用もありますので、そこでさらに数百万円がかかります。
もちろん地方であれば家賃10万円以下などの物件もありますが、どちらにしても初期費用が高額であることには変わりません。
このような理由から途中で変更することが難しいわけです。
もし不動産選びで失敗してしまった場合、
- 同じコンセプトの強豪店が近くに出店してしまった
- 地域にターゲットとなるお客様があまりいない
- アクセスが悪すぎてお客様が来店してくれない
- アクセスが悪くてスタッフも集まらない
と言ったことが考えられます。 このような状況を避けるためには、物件選びの際には十分なリサーチが重要です。
2. 不動産選定をする前に決めておくこと
以上の通り、不動産選定はサロンの成功にとって最重要ともいえる要素ですが、物件探しを始める前に考えて置くべきことがいくつかあります。次の4点です。
- 店のコンセプト
- 利益目標
- お店の規模(セット面の数・スタイリスト数)
- 月額家賃の予算
① 店のコンセプト
どのようなお店にしたいのか、コンセプトを明確にしておかなければ自分にあった物件探しをすることはできません。
なぜ先にコンセプトを明確にしておく必要があるのかは、コンセプトによって出典すべきエリアや立地が変わってくるからです。
以下の3つの例を想像してみれば、出店すべき地域も立地もまったく異なることがわかることでしょう。
ハイトーンカラーを武器に、個性的なヘアカラーを楽しみたい若者をメインターゲットにした美容室
(例2)
高単価だが高品質な髪質改善メニューを武器に、歳を重ねて髪質が悪くなってきたことに悩むマダムをメインターゲットにした美容室
(例3)
実家のような安心感のある空間と接客を提供して、地域密着のサロン営業を自分ひとりで行う美容室
言うまでもなく、イメージする出店地域はまったく違いますよね。
リサーチをしなくたって例1なら東京・原宿などをイメージするでしょうし、例2なら同じ東京でも銀座や田園調布などが良さそうなイメージが湧きます。例3なら固定費の面から見てもターゲット層の分布から見ても、地方で開業した方が良さそうです。
また、例1でターゲットとしている流行に敏感な若者なら、腕のある美容室をSNSなどで探す割合が高いでしょう。 少々アクセスが悪いような地域でも、SNSをうまく活用できれば集客が見込めると思われます。
しかし、例2のようなコンセプトの美容室は、アクセスが悪いと集客が厳しいかも知れません。このような美容室を駅徒歩15分の立地で出店して十分な集客が見込めるでしょうか? 難しいのは想像に硬くありません。
お店のコンセプトの考え方については《vol.3「サロンの経営理念・コンセプトを考える」》で解説しておりますので、こちらをご覧ください。
②利益目標
利益目標の重要性は《連載初回「美容室独立開業の第一歩!「利益目標」から逆算思考で理想の店舗を具体化しよう」》にて解説している通りで、開業を目指すに当たって真っ先に考えるべき事項です。
月額でどのくらいの利益を出す美容室にしたいのか、それを出発点に逆算的に考えることで、必要なお店の規模、月額家賃の予算なども見えてきます。
利益目標の考え方について、詳しくは上記の記事をご覧ください。
③お店の規模(セット面の数・スタイリスト数)
利益目標やお店のコンセプトを元に考えれば、必要なセット面の数やスタイリストの人数などが見えてきます。
それが決まらなくては、どのくらいの敷地面積を持った物件が必要かなどが見えてきません。
なお、セット面の数を元に必要な敷地面積の目安は次の通りです。
セット面数 | 坪数 |
---|---|
2面以下 | 5〜10坪 |
3〜4面 | 8〜15坪 |
5〜8面 | 12〜25坪 |
8面以上 | 20坪以上 |
どのくらいのセット面が欲しいかは物件を探す前に確定させておきましょう。
④月額家賃の予算
利益目標やセット面数を元に、月額家賃はいくらまで許容できるのか、予算を立てます。
ポイントは 希望額だけでなく、利益目標から実現可能な上限金額を設けておくことです。
物件を実際に見て気に入ると、具体的な数値についてよく考えていなかった場合、イメージしていた予算より高い気がしても、どうしてもそこが良いと思ってしまうことが多々あります。
そうなると都合よく考えてしまいがちで、「大変だけど、しっかりやれば何とかなりそうだ!」などと安易に判断してしまうこともあります。 こうした甘い見積もりが後々経営を圧迫してしまうのです。
3. 不動産選定の重要ポイント
以上の4つの点をしっかり明確にしたら、実際の不動産探しを始めます。不動産探しで考慮すべき重要ポイントは次の通りです
[不動産選定における15の重要ポイント]
- 都内、都下、県(首都圏)
- 最寄り駅の乗降客数
- 所属市区町村の人口
- 昼間人口/夜間人口
- 近隣の学校分布と生徒数 (大学・女子大)
- マンション分布
- 近隣施設の状況
- ターゲット層の生活導線
- 近隣の美容室の件数
- 坪数
- 予算
- 最寄駅から徒歩圏内かどうか
- 階層(1F,2F or 地下)
- 通りに面しているか否か
- 近隣に似たコンセプトの競合店があるか
(1) 出店エリアの選定
物件探しと言うと物件自体の情報(坪数、家賃、外観、内装など)を意識しがちですが、それ以上に重要なのが出店エリアの選定です。
ここでは、次のようなことをリサーチします。
- 都内、都下、県(首都圏)
- 最寄り駅の乗降客数
- 所属市区町村の人口
- 昼間人口/夜間人口
- 近隣の学校分布と生徒数 (大学・女子大)
- マンション分布
- 近隣施設の状況
- ターゲット層の生活導線
- 近隣の美容室の件数
まずそもそもですが、都内・都下で出店するのかどうかは大きなポイントと言えます。 東京は美容室の激戦区ですが、美容意識が高い人が多く、大きな成功も望めます。 しかし家賃が高額であったり、競合店が多かったりといったデメリットも大きいのでよく考える必要があります。
都心部、特に 東京都内への出店を考えている場合、最寄駅は非常に重要です。
都内において、人々の交通を主に支えているのは電車です。そのため、都心部への出店を考えるのであれば、まず意識すべきは「何駅の近くに出店するか?」ということです。
また、駅だけではなく商圏エリアの人口や層、人の動きのリサーチも重要です。駅についてのリサーチと同様、ターゲット層のお客様を意識する必要があります。
単純な人口だけでなく、エリアに存在する大学・短大、昼間人口と夜間人口の比率、近隣施設やマンション分布なども踏まえ、ターゲットとなるお客様が多いのかどうか、アクセスしやすいのかどうか考えます。
これらのことをリサーチして、出店エリアの候補を絞ります。
詳しくは、後続の連載第14、15回で解説いたします。


(2) 候補となる物件の選定
出店エリアの候補が決まれば、もう少し具体的な物件探しが始まります。 候補となる物件を探すにおいて押さえたいポイントは次の通りです。
- 坪数
- 予算
- 最寄駅から徒歩圏内かどうか
- 階層(1F,2F or 地下)
- 通りに面しているか否か
- 近隣に似たコンセプトの競合店があるか
最寄駅から徒歩で行けるかどうかは都内なら非常に重要と言えます。 また、通り沿いかどうかで露出や集客力も大きく変わりますし、地方なら車でのアクセスが容易になります。
このような立地面だけでなく、当然ながら坪数や家賃が予算内であるかも考慮する必要があります。
以上のようなことをリサーチして、候補となる物件を選定していきます。
詳しくは、後続の連載第16回で解説いたします。

4. 判断基準を明確にして、物件を点数化する
以上のようなポイントを押さえて物件選定をしていきますが、その際に重要となるのは「ブレない判断基準を持つ」ことです。ブレないリサーチをするポイントは次の通りです。
ポイント② 候補の物件をリサーチして、点数化する
ポイント③ 最後は自分の目で実際に見に行く
重要な判断基準となるのは3章であげた計15個のポイントですが、その中でも何を重視するかは店舗のコンセプトによって変わってくるでしょう。
自分の中で明確な判断基準を作り、候補となる物件を点数化 しながら調査していくと良いでしょう。
そうすることで、リサーチを続けていくうちに判断がぶれていくことを防止することが可能です。そして最後は自身の目で見て最終判断を下すようにしましょう。
以上、今回は「不動産選定の重要性」について解説いたしました。今回の内容をおさらいしておきましょう。
- 美容室経営の成功は70%が不動産選定で決まってしまうと言われている
- 不動産選定を始める前に、店のコンセプトや利益目標、セット面数、家賃の予算などは具体的に決めておく必要がある
- 物件選びいは家賃や坪数などといった物件自体の情報も大切だが、それ以上にターゲット層を意識した商圏エリアについてのリサーチをすることが重要
- ブレない判断基準を持つために、物件を点数化しながら調査を進めるとよい
今回紹介した [不動産選定における15の重要ポイント]の詳細は第14回~16回で深掘りしていく予定です。
次回の第13回ではその前知識として「サロンの規模と商圏」について解説いたします。
この連載があなたの美容室開業の助けになれば嬉しく思います。