【Vol.30】美容室の経営|宣伝・広告の手段と使い分け

美容師として独立開業し、美容室オーナーになるまでに必要なこと、知っておきたいことをまとめたこの連載も今回で第30回です。

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今回から数回にわたって「宣伝・広告」について解説していきます。

まず今回は、「宣伝・広告の手段と使い分け」について解説いたします。

美容室を経営し、利益をあげていくためには、多くのお客様に利用してもらう必要があります。たくさんのライバルがいる中でお客さまに選んでいただき、利用していただくためには、効果的で効率のよい広告・宣伝が不可欠です。

具体的な宣伝・広告の方法と、その使い分けについて解説してきます。

 1. どうして宣伝が必要なの?

数ある美容室の中で生き抜いていくためには、お客さまに自分のお店を見つけてもらい、さらに来店につなげる必要があります。そのためには早い段階から、宣伝活動を行う必要があるのです。

具体的な理由
  • 美容室が増えている
  • 技術力だけで生き残ることは難しい

この二つについて解説します。


美容室が増えてきている

全国の美容室は現在約25万軒あり、コンビニと比較すると約4倍にもなります。さらに、その数は年々増え続けています。

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「美容師は独立してなんぼ」と考える人が多い業界ですので、これからも増えていく事が想像できます。その中で自分の美容室を選んでもらうことは簡単なことではありません。

一昔前であれば、美容室は出せば儲かるという考えもありましたが、お店の数が増え続けているなかでは、効率的な集客対策は欠かせません。

また、どこの美容室でもなにかしらの宣伝はしているはずです。ですが、その取り組みに対する強弱はお店によってもばらつきがあります。

なんとなくSNSやブログをやっているだけだったりとか、なんとなく看板を置いているだけだったりとか、効果的な集客対策を出来ている美容室は少ないのです。

早めに取り組むことがおすすめ

だからこそ、効果的な宣伝・広告ができればチャンスは広がります。出店する地域の中で、一番の集客力を目指して早い段階から取り組みましょう。

技術力だけで生き残るのは難しい

どれだけ技術を高めて、どれだけ良いサービスを提供したとしても、集客力がなければ美容室として成功することは難しいです。

特に開業する際は、内装やメニューを考える事に必死になってしまい、集客がおろそかになりがちです。

技術やサービスは1度利用していただいたお客様の口コミなどで広げるのが無難なので、まずは新規のお客様を多く獲得できるよう、宣伝・広告に最大限力を入れて取り組みましょう。

2. 宣伝・広告の手段

美容室増加に伴い、宣伝の方法も多様化してきています。今回はその中でも抑えておきたい10個の方法を紹介していきます。

宣伝方法は大きく分けて「オンライン」「オフライン」に分けられます。まずはオンラインの方法から紹介していきましょう。

オンライン集客

オンラインでの宣伝は、色々な手段を組み合わせて効果を発揮するものが多いので、幅広く押さえておくことがおすすめです。

web上で宣伝することで、地域を絞らず遠方のお客様にも情報を届けられるのがメリットです。

① 大手予約サイト(ホットペッパービューティー、楽天ビューティーなど)

ネットで美容室を探すとき、「地名 美容室」で検索をかけると上位サイトはほとんど予約サイトが占めています。それだけ、多くの人が予約サイトで美容室を探しているのです。

ユーザーが多ければ多いほど見てもらえるチャンスは増えます。

MEMO

ただ、予約サイトは美容室の掲載数も多く、普通に掲載しただけでは埋もれてしまいます。そのため、大体の予約サイトが高価な料金を支払い上位に表示できるという仕組みになっているのです。

自店舗の宣伝にかけられるコストと照らし合わせ、利用するべきか検討しましょう。

② ホームページ、ブログ

ホームページは必ず作りましょう。ホームページで直接集客を行うわけではありませんが、他の宣伝広告を見た人がホームページを確認して予約するという流れになります。

コストをかけても良い

特に、SNSで美容室を知って予約する人の半数以上が、公式ホームページをチェックします。ホームページは多少コストをかけても良いものを作ることをおすすめします。

ブログについては、もしやるのであればアメーバブログなどではなく、自店の公式ホームページ内に組み込んで、集客を狙える本格的なブログをやるべきです。

ブログを作成するメリットはたくさんあり、集客はもちろん美容室の新しい情報を公開することで、一度来店したお客様にリピートを促すこともできます。

単に日記のような内容を書くのではなく、美容情報やお店の価値を提案できるようにすることが重要です。

SEOマーケティング

特に昨今は、ヘアケア方法やおすすめ商品の紹介ブログを、Google対策を施して検索上位を狙う「SEOマーケティング」などと言われる手法も増えてきています。手間はかかりますが、ブログをうまく育てればホットペッパー等に頼らない大きな集客源になってくれます。

③ Instagram

ホームページとともに押さえておきたいのはSNSです。その中でもInstagram、Twitter、Facebookについて解説します。SNSは無料で始められるコンテンツなので、早い段階で始めておきましょう。

Instagramは今とても勢いのあるSNSです。Instagramは他のSNSに比べておしゃれなイメージがありますし、ビジュアルで見せることができるため美容業界とかなり相性のいいサービスです。

Instagramで店内の雰囲気や仕上がりのイメージの写真を投稿すれば、どのようなお店なのかをダイレクトに伝えられます。

MEMO

特に、10代~20代にかけての若い人は、GoogleやホットペッパーではなくInstagramで美容室を探す人が増えてきています。若い年代をターゲットにしたお店を目指すなら、Instagramは避けて通れないと言えます。

④ Twitter

Twitterは文字での発信に長けています。Twitterの特徴は「面白い出来事」、「共有したい情報」が拡散されやすいことです。

Twitterでは、お店の宣伝ばかりしていてもユーザーに読んではもらえません。お店の雰囲気や従業員の人柄がわかるような投稿をしたり、為になる美容情報などを発信したりすることで、多くの人に知ってもらえるチャンスが広がります。

⑤ Facebook

Facebookも同様で、ユーザーの多い大手のSNSです。

定期的に新メニューの紹介など、お店の新しい情報を発信することで、新規のお客様に情報を届けられますし、来店したことがあるお客様にも再来店を促すことが出来ます。

⑥ Googleマイビジネス

Google MAPを使用した宣伝です。

家からの近さや、通いやすさなどの理由から美容室を選ぶ人にとってGoogle MAPはとても便利なツールです。そういった理由で美容室を選ぶ客層は一定数います。無料で掲載できるので、ぜひ活用しましょう。

以上の6つがオンラインでの宣伝方法でした。オンラインでの宣伝に関しては、次回の記事でさらに詳しく解説します。

【Vol.31】ホームページ作成して、ネット広告とSNSを活用する

オフライン集客

宣伝というとオンラインに力をいれがちですが、オフラインでも工夫次第で多くの集客を期待できます。

インターネットをあまり使わない人にもお店を知ってもらえるというメリットがあるので、50代・60代以上の方をターゲットとする場合などには特に力を入れたいです。

⑦ チラシ

チラシはまさにインターネットを使わない世代からの来店を期待できます。近隣に住むお客様に絞って宣伝をできることもメリットです。

ポイント

特に、SNSで美容室を知って予約する人の半数以上が、公式ホームページをチェックします。ホームページは多少1回の配布では見られずに終わってしまうこともあるので、最低でも3回以上継続して続けるのがおすすめです。また、クーポンを一緒に配布することで集客率が高まります。

ただし、自分でチラシの作成やポスティングをしているとかなり労力が大きく、かといって業者に依頼するとコストが大きくなる宣伝方法です。自分のお店のターゲット層を踏まえて十分な効果が得られるかを検討し、宣伝にかけられる時間や予算と照らし合わせて考えましょう。

⑧ 看板、ポスター

看板やポスターは簡単に設置できますし、置いておくだけで継続的に宣伝が出来ます。家から近いという理由で美容室を選ぶ人もいるので、近所の人に美容室があることをアピールしましょう。

看板やポスターは美容室の顔となるので、デザインや内容がそのままお店のイメージになります。美容室はイメージが大事なので、ターゲットとしているお客様に何を伝えたいかを慎重に考えて設置しましょう。

POINT

歩いている人にとって見やすい文字であったり、設置する高さや場所も大事なポイントになります。

⑨ ポイントカード

ポイントカードはリピートを促進するマーケティングとして様々な業界で使われています。美容業界でも多く導入されていて、特に一度きりの利用も多い美容室では固定客を獲得する重要なアイテムです。

美容室の客層
  • 技術面などの理由から「髪を切るならここ」と決めていく客層
  • 「家から近いから」「お得だから」といった理由で決めている客層

美容室を選ぶときの心理はこの二つのの客層にわけられます。

前者の客層は、他店に流れる可能性が低いお客様と考えられますが、後者のお客様は家からもっと近くてお得な店が出来た場合に、乗り換えをしてしまう可能性が高いです。

こうした流動性の高いお客様にポイントカードを発行して、ポイントをためる楽しさだったり、割引がうけられるなどの付加価値をつけることで再度来店する動機になります。

⑩ 紹介制度

ポイントカードと並び、美容室では良く見られる手段で、お客様の友人、知人に美容室を宣伝してもらいます。

紹介キャンペーンで紹介した人にも、紹介された人にも割引が受けられるようにし、お客様自信も紹介したくなるような特典があるとよいでしょう。

友人に紹介されたお店は、すすめられたこともあって「行ってみようと」思うものです。


以上で紹介した宣伝広告は、どれも押さえておいた方がいいものです。ただ、全てのツールをまんべんなく強化することは時間や労力から考えても難しいでしょう。

自分の目指す美容室はどの宣伝広告を使えば効果的なのか、見定める必要があります。

 3. 宣伝広告の使い分け

基本的にはたくさんの宣伝ツールを使用して、お店の情報を発信するべきです。お客様がどんなきっかけでお店を知るかはわかりません。きっかけは多い方が良いですからね。

ただ、効率をよくするためにも、力を入れて取り組むツールは絞った方が良いです。絞る基準は以下の2点から考えられます。

  • 予算から選定する
  • ターゲットに合わせた宣伝をする

この二点について詳しく解説します。

予算から選定する

美容室開業にあたって物件や内装工事、備品の準備などいろいろ費用がかかります。そして、そのそれぞれに予算を出しているはずです。その中でどれだけ宣伝にコストをかけられるかにより、使用する宣伝広告は絞られます。

もし多くのコストをかけられるのであれば、大手予約サイトに資金を投資することで、よりたくさんの人に見てもらえるでしょう。

逆にあまりコストをかけずに宣伝する場合は、ホームページやSNSをより充実させる必要があります。

コストパフォーマンス

ただ、宣伝に関してはコストパフォーマンスも意識する必要があります。収益に対して、宣伝費用の方が大きくなっては意味がありません。宣伝にかけたコスト以上に、お客様を獲得して利益につなげられるかが重要です。

ターゲットに合わせた宣伝をする

お店のコンセプトを考える際には、あわせてターゲット(客層)も明確にしていました。そのターゲットにあった宣伝をしましょう。

例えば、年齢が高い層をターゲットにしているのであればオンライン集客に力を入れてもあまり効果は期待できません。そのぶん、チラシや看板などに力を入れると良いでしょう。

SNSで言うと、若い女性をターゲットにするのであればInstagram。サラリーマンなどの男性に合わせるのであればTwitter。来店してくれた方に限定でお得な情報を発信してリピートを促すならFacebook。

このように、より効果が期待できる方法を選択することで、コストや労力を抑える事が出来ます。

なお、コンセプトに関しては【Vol.3】でも解説しています。

【Vol.03】サロンの経営理念・コンセプトを考える

まとめ

今回は「宣伝・広告の手段と使い分け」について解説いたしました。ポイントをまとめておきましょう。


  • ターゲットにあわせ、オンライン・オフラインを組み合わせて手段を選ぶことで、効率よく集客する事が出来る
  • コストパフォーマンスを意識する
  • 多くの宣伝広告を利用して美容室の情報を発信する。ただし、注力するべき宣伝広告は明確にすることが大切

若い世代をターゲットにするには、これからはオンライン上での宣伝・広告は非常に大きいです。公式ホームページを作り、InstagramやGoogleマイビジネス(Googleマップ)、ブログでの発信に力を入れると良いでしょう。

年配の層がターゲットなら、チラシや看板、ポイントカードなどオフラインの宣伝・広告に力を入れるとともに、知人のご紹介をしてもらいやすくなる工夫をしてみると良いでしょう。

次回は「ホームページの作成とネット広告」について解説していきます。

この連載があなたの美容室開業の助けになれば嬉しく思います。